- 働き方改革
- 2019.09.01 (最終更新日:2022.03.26)
働き方改革で残業を減らす!時間外労働の上限規制の関連法案
働き方改革関連法案「時間外労働の上限規制」とは
そもそも時間外労働とはどういう労働を指すのでしょうか。残業と何が違うのかと疑問に思う方もいるかと思いますのでご説明します。
時間外労働とは、労働基準法で定められた法定労働時間である1日8時間、1週間40時間を超えた時間の労働のことを指します。法定時間外労働などとも言われます。法律で定められた時間を外れるので時間外労働と言うわけです。
これに対して、法律ではなく企業が定めた就業規則による所定労働時間を超える労働のことを所定時間外労働と言います。私たちが日常で「今日は残業だ」などと言うときは所定時間外労働を指すことが多いです。しかし厳密には、残業は所定時間外労働と法定時間外労働を合わせたものという仕組みになっています。
今回の法改正では企業の就業規則ではなく法律が関係あるので、法定時間外労働について影響があるということになります。
時間外労働の上限規制の概要は以下の通りです。
(1)時間外労働の上限は原則月45時間、年360時間まで
今回の改正により、時間外労働が月45時間、年に360時間までを原則とするように定められました。
(2)特別な事情がある場合は月100時間未満、年720時間以内
特別な事情がある場合は原則を超えて時間外労働をすることができますが、それでも月100時間未満、年720時間以内と定められています。
(3)特別な事情があっても、複数月の平均は月80時間以内(2〜6ヶ月平均全てが80時間以内)
特別な事情があっても複数月の平均は月80時間以内とするように定められており、原則である月45時間を超える月は6ヶ月を限度としています。
(4)大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から施行
影響力の大きさから、中小企業は施行が1年猶予されています。
時間外労働の上限規制に違反した場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が定められており、事業主も労働者も決して無視できないものになっています。
働き方改革関連法案 施行前の残業事情
働き方改革関連法案の施行前は、時間外労働の法的な上限はなく、残業時間はいくらでも設定できる状況でした。一応大臣告示の上限として月45時間、年360時間までと定められていたものの、法的な拘束力はなく、罰則もありませんでした。
今回の改正によって法的に上限が定められ、罰則も規定されました。これにより原則月45時間、年360時間を超える時間外労働をすることができなくなり、残業時間が減少することが予想されます。
残業時間が減少するならいいことのように思えますが、そう単純でもないのが難しいところです。働き方改革関連法案の時間外労働の上限規制が施行されることで、新たな問題が浮上しているのです。
働き方改革で残業が減ることによる影響
働き方改革関連法案の時間外労働の上限規制によって、残業時間が減少することは明らかでしょう。労働者は空いた時間を有効活用できるようになり、豊かな生活を送ることが可能になります。また、ダラダラと残業することがなくなるので、生産性向上につながることが予想されます。
しかし、これは理想に過ぎません。現実はそう単純ではなく、現場だけではなく会社全体できちんと仕組みを作って対応しなければ、むしろデメリットが生じてしまう恐れがあります。
ここでは、働き方改革で残業が減ることによるデメリットについて解説していきます。
残業代削減で生活できない社員が増える
残業時間が減少するということは、残業代が減ってしまうということです。残業代を計算した上で生活している社員もおり、そのような人たちにとって残業代がカットされることは、満足いく生活を送ることを困難にする恐れがあります。
年収にすると50万円程度下がることが予想され、収入が低下することにより生活の悩みが増加する、転職する社員が増えるといったことが起き、現場が混乱する恐れがあるのです。
管理職の負担が増える
社員の残業時間を細かく管理する必要があるだけではなく、現場の社員を早く退社させる必要があり、自分で仕事を負担するようになる管理職が増えると予想されます。ただでさえ業務が多い管理職の負担が増し、後述するようなサービス残業が増える恐れもあります。
サービス残業や隠れ残業が増える
理想は残業をせずに全て仕事を終わらせることです。しかし、現実的に残業を多くしないと仕事が終わらないという企業も多いことでしょう。
そのような場合に、法律に違反しないように表向き退社して残業をしていないことにするサービス残業や、家やカフェなどに仕事を持ち帰って仕事をする隠れ残業が増える可能性があります。
労働時間を短縮して豊かな生活を送るために時間外労働を規制しているのに、結局仕事がやりにくくなるだけで負担が全く減らないということになりかねません。
働き方改革で残業を減らすには
働き方改革関連法案の時間外労働の上限規制は、課題が多く、デメリットも多くあるということがわかりました。ここでは、そんなデメリットが生じる状況を回避するための方法について解説していきます。
残業時間の可視化
誰がどれくらいの残業をしているのか可視化できるようにして、社員の現状を把握することが大切です。そのためにもITツールなどを導入し、勤怠管理を徹底するといいでしょう。
管理システムだけではなく、コミュニケーションツールを導入することにより、社員の業務の状況を把握し、サービス残業をする社員が出てくることを予防することができます。
また、最初の内は、経営者や管理職がタイムカード打刻などの不正が行われていないかなど、自分自身でチェックすることも大事です。全員で残業を減らすことも目標にし、残業をごまかして仕事をしない空気作りを行うといいでしょう。
業務効率化による残業時間削減
残業を無理なく削減するためには、会社全体で業務効率化に取り組む必要があります。今まで手作業で行っていたことに対し、ITツールの導入によって効率化する、外注して社員の業務を減らす、会議など日頃行っていることを見直し本当に必要なのかどうか検討する、マニュアル作成、気持ち良く仕事できる環境整備といったことが挙げられます。
また、企業が浮いた残業代を社員に還元する仕組みを整えることで意欲向上につながり、結果業務が効率化するというケースもあります。例えば残業代20時間分を固定給として支給する、カフェテリアポイントでの還元、レストランやジムなどの割引制度を導入するといったことが挙げられます。
考えてみると、業務効率化のために工夫できることは数多くあります。形だけの残業削減にならないためにも、企業も社員も一丸となって業務効率化の努力をする必要があるのです。
まとめ
働き方改革関連法案の時間外労働上限規制により、原則時間外労働が月45時間、年360時間までとなります。これにより労働者の残業時間が減ることが予想されますが、残業代がなくなる、管理職の負担が増える、サービス残業が増えるというデメリットも生じる恐れがあります。
そのようなデメリットを避けるためには、企業と社員が協力して業務効率化に取り組むことが大事です。仕事のクオリティを上げることで、少ない時間で大きな成果を出すことができるようになり、好循環を生み出すことが可能になります。
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