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  • 2021.05.11 (最終更新日:2022.03.26)

人事担当なら注目したい!従業員の生の声を聞いて進める健康経営

目次

従業員を置き去りにした健康経営をしていないかどうか

ヒアリング 健康経営は従業員の健康を考えた経営方法です。そのため、健康経営をしていれば、従業員の満足度が上昇して定着率が伸び、採用活動も楽になると考えている経営者や人事担当者がほとんどです。

確かに健康経営をしている企業と健康経営をしていない企業を比べれば、これから就職活動をしようとしている新卒者や転職活動中の人たちは、自分たちのことを考えてくれている健康経営をしている企業に入社したいと考えます。健康経営をしている企業で、残業時間が長い企業や従業員同士のコミュニケーションが悪い企業が少ないと思っているからです。

ただ、健康経営をしているといっても、従業員の職場に対する満足度が100パーセントよくなるわけではありません。健康経営を始めたばかりの企業にありがちなことなのですが、何から始めればいいのかがわからないため、とにかく他の企業の真似から始めるというところがあります。それ自体が悪いわけではありませんが、他の企業の真似から始めても、ある程度、健康経営を理解してきたら次のフェーズに移らないと従業員の満足度は上がりません。

例えば健康経営を始める前までの従業員の満足度が30パーセントぐらいだったのが、健康経営を始めていくうちに、50パーセント、70パーセントと伸びてきたものの、70からは伸びなくなってしまったというケースがあります。ですがこの数字を見ても、経営者や人事担当者は全員が満足できる経営なんてできないし、どんな経営だろうと文句を言う人が一定数いるものだから仕方ないと片付けてしまう場合もあります。本当にそうでしょうか?
また健康経営をしていて従業員の満足度が70パーセントに達したものの、その次にアンケートを取ってみたら50パーセントに下がっていたということもあるかもしれません。

こういった場合に起こっている原因としては、従業員を置き去りにした健康経営になっている可能性があります。A社にいる従業員と、B社にいる従業員では思想思考体質などが全く同じということはありません。社によって従業委の性質が異なっているのが通常です。健康経営のとっかかりとして、先にA社が健康経営をしていて成功しているのを見たB社が、A社の真似をして健康経営に取り組むのは正しいことです。ですが、1年、2年過ぎてもB社が自社の従業員の性質を見ようとはせず、延々とA社の真似を続けていればどうなるでしょうか?

従業員の定着率の上昇、新しい従業員の確保を考えているのであれば、この部分がとても重要です。

従業員を置き去りにした健康経営とは具体的にはどういうものか

受動喫煙 健康経営の施策は定番のものからユニークなものまでさまざまあります。健康経営には形式が特にないというのも特徴です。そのため、健康経営の施策はどんどんと新しいタイプのものが生まれてきています。

では、従業員を置き去りにした健康経営とはどういうものかというと、例えば「タバコ」に関する健康経営の施策。
禁煙セミナーを行い、従業員にいかに喫煙や副流煙が外になるのかということを行ったとします。どんな従業員の特性がある会社でも、1回目に行う時には差は出てきません。ですが、それを定期的に行った場合、喫煙率が40パーセントの会社と10パーセントの会社では従業員が受ける印象に違いがあります。
また健康経営の一環として、敷地内での喫煙全面禁止という対策を取ったとします。これも、喫煙率が40パーセントの会社と10パーセントの会社では従業員が受ける印象には違いがあります。
さらに言うと、健康経営を始める前は喫煙率が40パーセントだったものが、健康経営を始めて喫煙率が20パーセントになることもあります。それなのに、喫煙率が40パーセントの時と同じ施策を延々と繰り返していると、従業員の満足率はどうなるでしょうか?

健康経営を行うことで、従業員にも変化が出てきます。健康経営を行うのであれば、常に従業員の変化にも注目をしていないと、効果のない健康経営を行ったり、逆効果となる健康経営を行ったりすることもあるので、注意すべき点と言えるでしょう。

また「タバコ」を例に挙げましたが、他にも「メタボ」「運動不足」「コミュニケーション」など、企業には様々な問題があります。それらは、企業によってどれだけの人が問題を抱えているのかが違っているので、細かく見ていく必要があります。

従業員の声に耳を傾けるには

アンケート 健康経営で健康診断率を100パーセントにすることは、どこの企業にとっても必要なことです。ですが、健康診断率が50パーセントの企業と90パーセントの企業で同じ施策を取るのは、従業員の為になるでしょうか?企業側は、受診率が50パーセントから90パーセントに上昇しても、施策を変えなくて済むので楽かもしれませんが、施策を受けている従業員からすると不満の声が上がるかもしれません(施策の仕方によっては一概には言えませんが)。

つまり健康経営をして従業員の満足度を上げるのであれば、従業員が健康になるための数値を把握し、さらに従業員が今何を求めているのかの生の声も募る必要があるということです。この二つを把握し、「今」の従業員の状態に合わせて健康経営の施策を行っていく事で、ようやく従業員が求める健康経営を行うことができます。

とある健康経営を行っている企業では、従業員の生の声を聞くために一定の期間ごとにアンケートの実施をしています。アンケートは選択式と書き込み式の2パターンがあり、それを集計して、従業員の現在の状態を把握しているのです。また他にも、健康経営を実際に行う実働部隊を従業員の挙手制によって作り、1年ごとにチームの編成を変えるということを行っている企業もあります。どういった形で、従業員の生の声を聞くのがベストなのかは、企業の特性によって違いがあるため、自社にはどういったタイプの人が集まっているのかということを考えながら生の声を募ってく必要があります。

従業員に喜ばれやすい健康経営の実例

食生活 健康経営を行う目的は、従業員の健康維持や増進、予防、治療などです。人が不健康になる要因としてあるのが、人間関係によるストレス、多忙によるストレス、食生活、運動不足、睡眠不足、潜在的な病気などがあります。これらに対して、企業ができることが何なのかを考え実行していくのが健康経営です。従業員にどうなってほしいのかというビジョンは見えていても、そこにたどり着くまでのアプローチ方法は様々あります。

例えば食生活の改善。これを行うのでもアプローチ方法は様々あります。食育のプロを講師に呼んでセミナーを行ったり、食堂があるのであれば栄養バランスのいい食事を提供したり、自販機の飲み物のラインナップから炭酸飲料水を減らしたり。こういったことでも、実際に行う前と後では、従業員の食に関する考え方は変わります。ですがそれだけでは、従業員の満足度には繋がらないかもしれません。

そこで、とある企業ではこんなことをしています。
・社内ツールによって「食べたものの栄養素」を可視化⇒さらに社員の食事のデータを会社で分析して次の健康経営の施策に役立てている
・腹八分目プログラム⇒1~10の規則を示して、誰でも無理なく取り組める仕組みを作っています。また常に腹八分目にするのではなく、食べ過ぎた日の後、3日以内で帳尻合わせをするというような救済もあり、取り組みやすいものになっています
・野菜プラスランチ⇒塩分量を塩分時計を見ながら試飲する体験イベントを実施。楽しみながら食への理解を深めることができます
・ヘルシー昼食の試食&カロリー当てゲーム⇒楽しみながら食生活を学べる場を作っています
・慰安旅行で「こんにゃく作り体験」⇒食生活改善の一助として、こちらも楽しみながら食育をしています

というように、「食生活の改善」というひと項目だけでも、これだけの方法を上げることができます。実践に近い形でのプログラムを組んだ方が、従業員もやらなくてはいけないこととして行うのではなく、楽しみながら行っているうちに自然と食についての知識を身につけられるので、従業員の満足度も上昇するというわけです。

従業員の満足度を上げることで採用にかかるコストを下げられる

採用コスト 健康経営を行えば、採用コストが下がるという言葉が独り歩きをして、ただ行えばいいだけだと思っている企業もありますが、その考えは間違いです。健康経営によって採用コストが下がるのは、健康経営を行うことによって従業員の会社への満足度が上がり、会社への定着度が上昇するため採用コストが下がるというのを忘れてはいけません。

つまり、健康経営で行っているのは、従業員の健康改善・増進をもとにした経営ですが、それによって従業員の会社への満足度を上げているというのが重要な部分です。そのため、健康にいいからという理由で、無理やり従業員に強制するような健康経営の方法を続けていても、採用コストを下げることには繋がりません。従業員を健康にするにはどうすればいいのかだけではなく、従業員が楽しい気持ちで健康にするにはどうすればいいのかを考えてみると、さらに新しい自社特有の健康経営の形が見えてくるかもしれません。そうすることによって、従業員の会社への満足度が上昇し、定着率が上がり、さらに従業員からの紹介によって人が入社を希望したり、採用の応募を出した時に優秀な人材が手に入りやすくなるはずです。

ただ健康経営をすればいいというだけではなく、どういった健康経営をするのがいいのかを改めて考えてみてください。

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