- 健康経営
- 2022.04.18
妊娠糖尿病は治る?入院や食事など会社ができるサポートを紹介
妊娠糖尿病について知り、会社として何ができるのかを考える
妊娠糖尿病は一般的に生活習慣病として知られている糖尿病とは異なり、妊婦特有の症状です。
今回は、妊娠糖尿病の治療のために必要な入院や食事管理等、会社からもできるサポートについてご紹介します。
社員の健康を守るためにできることから取り入れ、健康経営の実現を目指しましょう。
妊娠糖尿病とは?
妊娠糖尿病の原因、またそれによる症状や胎児への影響はどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、妊娠糖尿病の危険性について解説します。
妊娠糖尿病の原因や症状
妊娠糖尿病とは、生活習慣や先天性が原因の一般的な糖尿病とは異なり、妊娠が原因でなる糖尿病のことです。
通常、糖尿病の原因は血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌が悪くなるためです。
妊娠中は、胎児に血液を通して栄養を届けるために胎盤からインスリンの働きを抑えるホルモンが分泌されるため、妊娠中は通常よりも血糖値が上がる傾向があります。
しかし、このホルモンが何らかの原因で大量発生してインスリンの働きが抑えられすぎると、血糖値をコントロールできず妊娠糖尿病になります。
なぜこのホルモンが大量発生するのか、詳しい原因はまだわかっていません。
妊娠糖尿病になりやすい人とは
妊娠糖尿病になりやすい人にも特徴があります。下記のチェック項目で当てはまるものがないか確認しましょう。
- 35歳以上の高年出産
- 肥満
- 家族に糖尿病患者がいる
- 4000g以上の胎児を出産したことがある
上記に該当すると妊娠糖尿病になりやすい人だと言われており、甘いものを食べないように気をつけていても発症する可能性があります。
また、妊娠糖尿病の場合は出産後に自然に治るのが多いことも特徴です。
自覚症状はほとんどなく、自分で気づくのは難しいでしょう。
妊娠健診では血糖検査も行うため、早期発見のためにも受診をおすすめします。
胎児への影響は?
妊娠糖尿病になったら母親だけではなく、胎児にもさまざまな悪影響を及ぼします。胎児にどのような症状があらわれるのか見てみましょう。
- 通常より大きく成長して巨大児になる
- 生まれつきの疾患、異常が出やすい
- 新生児黄疸
- 子宮内死亡
胎児が大きくなるのはいいことですが、平均より大きく成長し4000g越えの巨大児になることもあります。
巨大児の出産時は難産になりやすく、帝王切開率が上がります。自然分娩でも妊娠糖尿病の方の出産は胎児の頭だけ出て肩が引っかかる「肩甲難産」になるケースが多いことでも有名です。
肩甲難産は母親が辛いだけではなく、胎児にも腕神経麻痺という後遺症が残る可能性がある危険な出産です。ほとんどが1年以内には症状が軽くなったり完治したりしますが、20~30%の胎児には一生麻痺が残ります。
また、産まれてからも次のような先天性の異常が見つかる可能性があります。
- 形態異常(奇形)
- 新生児黄疸
- 新生児低血糖
- 出産後の呼吸障害
最悪の場合、子宮内死亡など大変恐ろしい影響を及ぼします。今妊娠糖尿病でなくても、なりやすい人の項目に該当する方は注意が必要です。
自覚症状がほとんどないため、気づいた時には手遅れということもありえます。
胎児を危険にさらさないためにも早期発見・治療が大切です。
妊娠糖尿病の治療について
妊娠糖尿病になったらどのような治療をすれば治るのでしょうか。今回は入院期間や必要な治療、通常通り仕事は行えるのかといった疑問について説明します。
妊娠糖尿病はどんな治療をするの?
妊娠糖尿病の治療では徹底的な血糖値の管理が必須です。
自己血糖測定を行い、1日の血糖値の変化をきちんと記録します。血糖値は食事を食べ始めると上昇し、その後徐々に減少するため、一般的には3食の食前・食後・就寝前の計6回を測定します。
目安は食前が60~100mg/dl、食後は120mg/dlです。初めは運動療法や食事療法などで正常な血糖値を目指します。
運動療法では、医師の指示に従って体に負担の少ない運動を行います。妊娠中の激しい運動はできないため、軽いウォーキングやマタニティヨガなどがおすすめです。
食事療法では、栄養バランスのとれている血糖値の上がりにくいものを摂取するように心がけます。通常のダイエットなどとは異なり、胎児にも栄養を届けなければならないため過度な食事制限は禁物です。
理想は炭水化物・タンパク質・脂質の割合が5:2:3ぐらいであればバランスが取れている食事です。それだけではなく、野菜などビタミンも取り入れることで胎児の成長に必要な栄養素も摂取できます。
また、炭水化物や肉類から食べるよりも、サラダなどの野菜から食べることで血糖値の急激な上昇を抑えられるため、食べる順番にも気を遣うといいでしょう。
規則正しい時間に食べることも大切です。朝食を抜いたり、夕食の時間が遅くなったりするなど食事の間隔が開きすぎると、血糖値が急激に上昇します。
そのため、妊娠中はなるべく残業などで食事の時間がずれることがないように、会社側からの配慮が必要です。
それでも血糖値が下がらない場合は分割食を取り入れます。
1日3回の食事を6回に分割し、1回の食事量を減らし、食事の間隔を狭くすることで血糖値の振れ幅を少なくする方法です。朝昼晩の食事の合間にはヨーグルトやフルーツ、おにぎりなど80~160kcal以内の間食を取り入れましょう。食事療法だけでの治療が厳しい場合はインスリン投与を行います。
普段から規則正しい生活を心がけ、妊娠糖尿病を予防しましょう。
入院の必要や期間について
食前・食後ともに異常に血糖値が高い場合は入院が必要になる場合があります。
血糖値を正常にコントロールするため、食事管理をされた「管理入院」をして治療します。
だいたい2泊3日~1週間ですが、妊娠週数や治療経過などにより1週間以上かかる場合もあり一概には言えません。
血糖値が正常になったら退院できます。
仕事はこれまで通りできる?
妊娠前と同じように仕事をこなすのは、業種にもよりますがほぼ不可能といえるでしょう。
妊娠糖尿病になったら時間や栄養バランスなど徹底した食事管理が必要です。
残業で遅くなったから夕食の時間がずれたり、仕事で忙しくて昼食の時間がなかったりすると体への負担は非常に大きくなります。
1日6回の自己血糖測定や記録も行い、栄養バランスも考えなければならないため、お惣菜やお弁当を買って適当に食事を済ませることも難しくなります。
特にシフト制の職場で働いている方は遅番を代わってもらうなど周りの協力がないと厳しいでしょう。
ましてや入院が必要になったら何日か休まなければならないこともあります。
妊娠糖尿病を悪化させる原因になるため、体に負担がかからないように調整しましょう。
会社ができるサポートは?
社員が妊娠糖尿病になったら入院の必要・不必要にかかわらず無理をさせる訳にはいきません。ここからは会社として社員と社員の新しい家族の命を守るためにできるサポートをご紹介します。
無理をさせない体制をつくる
妊娠糖尿病を抱える社員に会社ができる1番のサポートは無理せず働ける環境を作ることです。
妊娠中に長時間勤務や残業など無理をすると妊娠糖尿病だけではなく切迫流産や早産などほかのトラブルを起こす可能性もあります。
通常の糖尿病とは違い、胎児の命にも関わる大切な時期であることを会社全体が理解する必要があります。
その上で妊娠中の社員が遠慮なく体調不良の際に休んだり、帰りが遅くならないように残業を減らしたりできる体制作りが大切です。
健康経営にも直結してくるため、ギリギリの人員で回していたり、会社全体の残業時間が多かったりする会社は今一度余裕をもった人員数や労働時間を見直す必要があるでしょう。
福利厚生としてサポート機能を取り入れる
健康経営を目指すために、福利厚生としてジムの利用などを取り入れている会社も多く見受けられます。最近では、女性の健康経営に特化した「女性の健康経営サポート」というサービスもリリースされており、このようなものを取り入れてみるのもいいでしょう。「女性の健康経営サポート」とは、株式会社エス・エム・エスがリリースした働く女性とその管理者向けのサポートサービスです。具体的には、以下に挙げる働く女性のライフステージに合わせて健康を守るサービスが受けられます。
- 24時間利用可能な医療従事者による相談窓口
- 月経や妊娠など、女性特有の悩みに対して専門家監修の情報提供
- 妊娠中の食事や運動をチャットなどを通して遠隔管理
- 出産後の授乳や子育て中の食事管理
福利厚生としてこのサービスを取り入れることで食事管理もやりやすくなり、妊娠糖尿病以外に気になることや悩みがあれば病院に行く前にチャットで医師に相談ができます。
妊娠中は悪阻などで外出して歩くのも辛かったり、精神的にも不安定になったりするため、いつでも相談できる場所があることはとても安心できます。
会社の利益を得るためにはまずは社員の健康から整えるという健康経営の理念に沿った素晴らしいサービスです。
まとめ
今回は妊娠糖尿病の危険性や、それに対して会社ができるサポートについて紹介してきました。
普通の糖尿病とは異なることや、最悪の場合胎児の命に関わることなどの危険性を理解し、それに対して必要な対策を考えることは健康経営を目指す上で大切なことです。
妊娠中は妊娠糖尿病だけではなく、他にも不調が多く起こります。仕事が原因で母親と胎児の健康を害することを防ぐため、体調に合わせて休んだり帰ったりしやすい雰囲気作りを心がけましょう。
また、健康経営を推進していくために睡眠時間や労働時間だけではなく、妊娠出産、子育てなど女性のライフステージに合わせた働き方も見つめ直す必要があります。
日本では妊娠中や子育て中の女性が働きやすい環境はまだまだ少ないのが現状です。
妊娠、子育て中の女性が働きやすい環境はワークライフバランスが充実しているということであり、それは健康経営ができている証拠でもあります。
妊娠糖尿病であってもなくても、妊娠中は極力無理をさせず、それが当たり前になる環境作りを目指しましょう。
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