- 健康経営
- 2022.05.10
ポピュレーションアプローチとは?実際に企業が取り組む事例を紹介
- 目次
ポピュレーションアプローチに取り組み企業内全体の健康志向を向上する
昨今はコロナの影響もあり、健康志向が高まっています。 ポピュレーションアプローチは、健康に対する士気をより高める活動のことです。 企業も社員の健康志向を向上させることでさまざまなメリットを得られるため、積極的に取り組みましょう。
ポピュレーションアプローチの意味とは?
ポピュレーションアプローチの意味について知っておけば、具体的にどのようなことに取り組むべきかわかりやすくなるでしょう。 ここではポピュレーションアプローチの意味について説明します。
ポピュレーションアプローチとは
ポピュレーションアプローチとは、高いリスクを持った人と限定せずに、自治体や企業内などの団体で全体のリスクを下げるように活動することです。
元から健康な人にもアプローチすることで、健康な状態を維持したりさらに向上したりできます。また、団体の中で健康のリスクに気づけていない人がいても、全体にアプローチすることでリスクを減らしたり、健康な人がリスクを抱える可能性を低くしたりする効果もあるでしょう。
リスクがある人に対してのアプローチも大切ですが、ない人・あるが気づいていない人に対してもアプローチし、全社員が健康な状態で業務ができるように取り組みましょう。
ポピュレーションアプローチの課題
ポピュレーションアプローチは、個人ではなく団体に対して行うためさまざまな課題があります。 ここでは、ポピュレーションアプローチが抱える課題についてご紹介します。
コストがかかる
健康的な体を作るために必要なことは、主に食事・睡眠・運動の3つです。
食事や運動に関しては、社食の導入や福利厚生としてスポーツ施設の利用を導入するなど、企業にも協力できることが多数あります。
しかし、新しい制度を導入することが多いため、コストがかかることが課題です。
コストをかけずに社員に対して食事や運動などのポピュレーションアプローチをするには、口頭で呼びかけるなどしかできないため、効果を実感しにくいでしょう。
しかし、睡眠時間を確保するために勤務時間を見直したり、精神的なリフレッシュのために休日を増やしたりすることなどは、コストをかけなくてもできます。
むしろ無駄な残業が減ることで、残業代などのコストを削減することも可能でしょう。
また、健康経営の方針に沿って社員の健康に投資すると考えることも求められています。食事か運動どちらかの福利厚生を設けるなど、できることから実行しましょう。
健康格差が広がる
ポピュレーションアプローチは個人に対してではなく団体の全員に対してアプローチします。
一人ひとりに対して手厚いサポートがあるわけではないため、健康志向の人とそうでない人の差が開くことが懸念されています。
健康な人は元から健康志向のことが多く、自身できちんとした健康管理ができています。
そのため健康に関する情報にも敏感で、口頭のみなどの軽いポピュレーションアプローチでも効果が出やすく、健康状態は良くなると予測されます。
しかし、リスクがある人やあっても気づいていない人は健康に関する意識の低さが推測されます。
特に生活習慣病などは、日常生活が大きく影響するため、健康の意識が低い人ほどリスクを抱えやすい傾向にあります。
そのため、ポピュレーションアプローチのように一人ひとりに対してではなく、団体に対してアプローチしても健康への意識が低い人の生活を変えることはあまり期待できません。
このような理由から、元から健康な人とそうでない人との差が開き、健康格差が広がることが懸念されています。
しかし、健康への意識が低い人に対して無理やり健康的な生活を送らせるのは窮屈に感じたり、ストレスを感じたりする可能性もあります。
企業がポピュレーションアプローチに取り組む際は、段階を踏んで少しずつ生活を変えていくなど、健康への意識が低い人にも負担にならないような配慮が必要です。
企業がポピュレーションアプローチに取り組むメリット
企業がポピュレーションアプローチに取り組むことで、社員にも企業にも多くのメリットがあります。 どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
企業の価値を向上する
ポピュレーションアプローチに積極的に取り組むことにより、消費者や顧客に社員を大切にする企業という良い印象を持たせることが可能です。
企業の印象が良くなることで価値が向上し、売上も上がるメリットがあるでしょう。
また、求職者に対してもホワイトな印象を持たせられるため、優秀な人材の採用や更なる効率・業績アップが期待できます。
さらに、ポピュレーションアプローチに積極的に取り組むことは、健康経営に取り組んでいる企業ということにもなります。
健康経営に取り組む企業は優良企業であると見なされ、金融機関によっては融資を受けやすくなる場合があるようです。
ポピュレーションアプローチに取り組むことにより、資金調達の選択肢も広げられるため、更なる企業の成長が見込まれるでしょう。
社員の医療費を削減する
企業内全体の健康志向を向上することにより、生活習慣病など日常生活で防げる病気のリスクを減らせます。
病気になれば治療や薬、通院になれば病院までの交通費などお金がかかります。これは健康的な生活を送れていれば、本来は必要のない出費です。
ちなみに健保組合の調査によると、2020年の時点で入院外の医療費のうち、約8割が生活習慣病だったそうです。
規則正しい生活を送っていれば防げるにもかかわらず、国の医療費を圧迫するまでになっています。
ポピュレーションアプローチは、生活習慣病のリスクを減らすことが充分可能です。
生活習慣病で病院に行くことが減れば、社員の医療費を削減し、国の医療費も必要な人に届けられるでしょう。企業が率先してポピュレーションアプローチに取り組むことは、社会貢献にも繋がります。
企業内の生産性を向上させる
食事・運動・睡眠のバランスを整え、社員の健康状態が良くなることで、業務の効率が良くなります。
特に睡眠不足は業務中眠気に襲われるため、頭が働かずにケアレスミスが多発したり、効率が悪くなったりと生産性の低下を招きます。
食事や運動にも気遣う時間もないほど働かせれば、生活習慣病になりかねません。
糖尿病は食後に強い眠気や倦怠感を感じ、高血圧は頭痛やめまいを感じるため、日常生活にも影響が出ます。
このような状態で業務を続ければミスが増えるどころか、最悪休職・退職しなければならない可能性もあります。
大事な人材を失い、人手不足に陥る可能性もあるため、社員が病気になる前に予防を呼びかけることが大切です。
企業がポピュレーションアプローチに取り組むには
実際に、企業がポピュレーションアプローチに取り組む際は、どのようなことから始めたらいいのでしょうか。 既に実施している企業の事例とともにご紹介します。
万歩計を支給する
ネッツトヨタ山陽株式会社で実際に行われているポピュレーションアプローチです。
27歳以上の全社員に「活動量計」を支給しています。歩数や消費カロリー、運動時間を自動で計測が可能なため、1日の活動量が非常にわかりやすいでしょう。
東京都健康長寿医療センターの研究によると、1日8000歩、そのうち20分は速歩きをすれば健康維持ができるそうです。
企業内で健康の目安を共有し、万歩計を支給して歩数や消費カロリーをすぐに確認できれば、健康維持のラインを目指しやすくなります。
また健康への意識が低い社員に、健康維持のラインと自身の運動量の差を理解させれば、健康への意識が芽生える可能性もあり効果的です。 バランスの良い社食を提供 管理栄養士が監修したバランスの良い社食を提供することも、ポピュレーションアプローチに効果的です。
ヤフー株式会社では、朝から夜まで3食の社食が提供されています。
栄養バランスはもちろん、減塩などにも気遣っており、社内で食事をするだけで健康的な食生活を送れるでしょう。
また、社員が揚げ物を食べる量を減らすために「揚げ物税」を導入し、揚げ物を使ったメニューは他のメニューより価格を高く設定しています。
反対に魚を使ったメニューは「お魚還元」とし、安く提供して社員に健康的な食事を選択させるような価格を設定しています。
また、ヤフーの社員だけでなく、オフィスのビルに入っている他社や一般人も利用可能だそうです。味も美味しいと評判で、利用率は1日平均でオフィス内の約45%と非常に高い利用率です。
社員だけでなく一般人にも提供することで、幅広い層にポピュレーションアプローチが出来ています。
しかし、安い価格で社員以外にも提供することが難しい企業もあるでしょう。
その場合は一般人と社員の価格を分けることで、一般人向けの「食堂」という新たな事業を始められるでしょう。
健康志向が高まっている現在は、健康的な食事ができる飲食店の人気が出やすい傾向にあります。
社員だけでなく、一般人にも目を向けたポピュレーションアプローチにより、更なる事業の発展を目指せるでしょう。
まとめ
今回はポピュレーションアプローチについて、企業にとってのメリットや取り組み方を述べてきました。社員の健康を優先した経営は厳しい場面があるかもしれません。
しかし、健康経営に取り組んでこなかった企業も、ポピュレーションアプローチであればリスクがある人にもない人にも、満遍なくアプローチできるため始めやすいでしょう。
不規則な生活や長時間労働で社員の命をすり減らすようであれば、優良企業とは言えません。
社員が健康に過ごせるように配慮をすることで、社員や顧客、消費者から企業に対する信頼も生まれます。
さらに社員を大事にする企業には、優秀な人材が集まり離れにくくなるため、常に良い状態でのパフォーマンスが可能になります。
企業の業績を上げ、同業他社の間で生き延びていくための投資だと思って、社員の健康を守る取り組みをすべきでしょう。
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