- 健康経営
- 2022.06.01
意外と多いハラスメント相談!企業の対処法を徹底解説
- 目次
職場におけるハラスメントは、社会問題として認識されるようになってきました。企業にも、対応体制の整備が義務付けられるようになったり、啓発活動や注意換気が盛んに行われています。
こちらの記事では、法律や厚生労働省発信の情報をベースに、企業のハラスメントへの対処法について解説していきます。
職場におけるハラスメント
職場には、様々なハラスメントが存在します。
広義と狭義の正しい理解をしながら、それぞれの企業での方針を定めたり、法律に則って対応できているかを普段からチェックできる仕組みづくりが必要です。
まずはハラスメントの定義から、確認しましょう。
職場におけるハラスメントとは
ハラスメントは、広く「人権を侵害する行為」を指す言葉です。 職場においては、上司や同僚の言動が、相手を不快な気持ちにさせたり、傷つけたり、尊厳を害し、不利益を与えることが該当します。 本人に意図があったかどうかは関係なく、就業環境を害しているとみなされる行為は当てはまることになります。 ハラスメントは、働く意欲の低下や心身の不調を引き起こし、その人らしく能力を発揮して働く機会を奪い、職場環境の悪化につながります。ハラスメントが起きたときの企業リスク
ハラスメントが発生した場合、本人同士の問題だけではなく、企業にとっても様々なリスクや損害が発生します。人間関係の悪化
ハラスメントの事実が明るみに出ると、他の従業員も働くモチベーションが低下し、企業へのエンゲージメントも低下します。 その結果、生産性が低下し、事業利益にも影響を与えることがあるのです。 それだけではなく、退職者が発生したり、企業やチームの存続にも悪影響を与えます。労災認定とその後の対応
ケガやメンタルヘルスの問題で、心身の健康を損なう人が発生した場合に、労働災害として認定されるケースも数多いです。 厚生労働省の発表によると、仕事が原因の精神疾患による労災認定は年々増加し続けています。企業イメージ低下
被害者が裁判を起こしたり、事件や事故となって報道されたり、その事実を知った人がインターネットに情報を書き込んだりすることで、ハラスメントの事実が明るみになり、企業イメージが大きく低下します。 顧客離れや採用が困難になり、企業存続にも影響を与えます。法律的リスク
不法行為や債務不履行責任が問われ、損害賠償責任を負う可能性が生じます。予防的措置の有無や事実を知りながらも放置していた場合には、違法行為として認定されてしまいます。ハラスメントを理解するためのポイント
ハラスメントの理解と企業における対処法を考える上では、以下の項目の理解が重要です。- 行為者にならないこと
- 自社の方針、防止対策を知ること
- 事案が発生した場合の相談窓口、対応者の役目
- 良好な職場環境を維持すること
- 雇用管理上の危機管理問題であるという、社内の共通認識
- 適切な事後対応
代表的なハラスメントの種類
相談があれば、何でもハラスメントに認定される訳ではありません。
社内の方針やルールなどに則っていて、業務を行う上で必要な指導や注意だった場合や、客観的に正当化できる行為であれば、ハラスメントに当たらないこともあり、正しい理解が必要です。
具体的なハラスメントの例をみていきましょう。
パワーハラスメント
厚生労働省によると、下記の通り定められています。職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの「職場内での優位性」を背景に、「業務の適正な範囲」を越えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為。
最近では、2019年にパワーハラスメント防止法が成立しました。 2020年からは大企業で、2022年からは中小企業においても施行されています。パワーハラスメントは、具体的に以下のような内容を指します。
- 身体的な攻撃(暴行、障害)
- 精神的な攻撃(暴言や名誉毀損、侮辱や脅迫)
- 人間関係からの切り離し(無視など意図的に孤立させること)
- 過大な要求(明らかに遂行不能なことを強制する)
- 過小な要求(その人の能力からみて著しく低いスキルを必要とする仕事をさせる
- 個のプライバシーの侵害(私的なことへの過度な立ち入り)
セクシュアルハラスメント
職場におけるセクシャルハラスメントは、「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されることを指します。「職場」には出張先や職務の延長の宴会なども含まれ、「労働者」とは事業主が雇用するすべての人が対象です。「性的な言動」とは、性的な事実関係を訪ねたり、噂を流すことや冗談、からかい、食事などへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すことなども含まれます。性的な関係の強要はもちろん、必要なく体に触れたり、わいせつなものを配布、掲示することも対象です。
モラルハラスメント
モラルハラスメントは、言葉や態度によって相手の心を傷つける精神的な嫌がらせのことを指します。 繰り返される無視や人格否定などの精神的な暴力は、人格や尊厳を傷つけ、被害者に心身の不調をはじめとする重大な問題を引き起こします。 のちの人生の長きに渡って悪影響を与えることになり、就業不能に追い込んだり、職場の人間関係を悪化させることもあります。マタニティ・ハラスメント
「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申請・取得した「男女労働者」等の就業環境が害されることを指します。簡単に言うと、子どもを産み育てることにおいて、他の人からの言動により、退職を示唆されたり、妊婦健診を休みの日に行くように言われたり、育児休業の希望を否定されることなど、健やかな気持ちで仕事を続けられない場合に該当します。
近年ハラスメントとして問題になっているもの
近年、さまざまなハラスメントを指すような用語が生まれています。- スモークハラスメント:タバコに関する嫌がらせ行為
- リストラハラスメント:嫌がらせで自主退職に追い詰める行為
- テクノロジーハラスメント:IT機器に不慣れな人に対する嫌がらせ行為
- エイジハラスメント:年齢や世代が違うことを理由とする差別的な言動や嫌がらせ行為
- ソーシャルハラスメント:ソーシャルネットワーク上でのプライベートなつながりを共用したり、無断で写真や情報を投稿するなどの行為
- スメルハラスメント:においによって周囲を不快にさせる行為
- マリッジハラスメント:結婚に関して必要以上に干渉する行為
ハラスメントが起きたときの企業の対処法
職場においてハラスメントに関する相談は年々増加しており、適切な対応を求められます。
相談を受けた場合は、人事担当者と連携し、迅速に対応することが大切です。問題をうやむやにしたり、放置すると事態の悪化につながります。
相談対応
相談対応では、下記のような守るべきポイントがあります。- 対応方法を明確にする
- プライバシーが確保できる部屋で相談を受ける
- 相談者と同性を含む複数名で相談対応を行う
- 協力者や相談者が不利益を受けないことを周知する
事実関係の確認
相談を受けた際には、必ず本人の了解を得た上で、行為者や第三者への事実確認を行います。意見が一致しない場合は、第三者からの情報収集を重ね、客観的な事実を集めます。取るべき措置の検討・実施
さまざまな要素を踏まえて、多角的に検討し、措置の内容や実施方法を検討します。具体的な要素は、以下の通りです。- 被害状況
- 事実確認の結果(人間関係、動機、時間、場所、質、頻度など)
- 就業規則の規定内容
- 過去の裁判事例
事業主による適正な措置の実施後の行為者・相談者へのフォロー
相談者に会社の対応や取り組みについて説明し、理解を得られるまで話し合います。さらに、行為者に対しても同様の問題を起こさせないようにフォローし、相談者、行為者の双方の労働環境を守ることができるように働きかけます。再発防止策の実施
取り組みを実施したら、事後の対応として定期的な検証、見直しが必要です。 全体や、階層別の研修を実施したり、希望者には面談の実施など、全体への対応と個別への対応ができる体制を整えましょう。 周囲に不安が広がるものと想定し、適切な対応を取っていることを明示したり、社内広報なども活用しながら、従業員が安心して働けるように発信します。相談を受けるときのポイント
相談窓口でなくとも、ハラスメントに関する相談は発生します。以下の内容に相談者が不安を感じた場合は、詳細を話してくれなくなったり、さらに問題が悪化する可能性があります。
相談者のプライバシーに配慮する
相談者に対して、秘密厳守や、相談をしたことで不利益や不当な扱いを受けないことをはっきりと伝えましょう。 まず相談者の不安を取り除くことで、深い聞き取りが可能になり、状況がクリアになっていきます。 行為者や第三者に事実確認する場合は、事前に相談者の許可を得ることが必要です。相談者の思いもよらないところで話が漏れてしまうことは、絶対に避けるよう対応しましょう。相談者がリラックスして話せるように配慮する
聞き役に徹し、まずは相談者にしっかりと話してもらうことが大切です。自分の意見を挟まずに、声掛けは状況整理をするような内容に留めることで、より具体的に聞き取ることができます。 話しやすいように、他の人に話が聞こえない個室を確保し、真正面ではなく90度や斜めの位置に座ることで、相談者の心理的負担を和らげることができます。相談後に労いの言葉をかける
相談者が、相談するに至るまでには、不安や葛藤があります。そのため、まずは相談したことに対してねぎらいの言葉をかけ、受容と共感の姿勢を示しましょう。 過度に褒める必要はなく、誠実な姿勢で相談するまでの心理的な負担があったことを受け止め、問題解決に向かい一緒に対応することで安心感を与えます。相談を受けるときのNG集
相談することによって傷ついてしまう、もしくは二次被害を自分が起こしてしまわないためにも、以下のような対応は避けましょう。
相談者に問題があるような発言
具体的には「あなたにも悪いところがあると思うよ」といった主旨の発言です。この言葉を伝えることで、「私はあなたも悪いと思っているよ」という反省を促すメッセージを伝えてしまうことになります。不用意な慰め
「あなたが魅力的だからそんなことをしてしまったんじゃないかな」「あなたに期待してそんな風に言ったんじゃないかな」などの発言は、相談者にとっては的はずれな慰めであり、誤解が生じかねないメッセージを伝えることにもなります。行為者を一般化するような発言
「男性(女性)って、みんなそこまでわからないんだよ」「みんなそうやって成長してきたよ」などの発言は、行為者にあなたも同調していることを案に示すメッセージとなります。きちんと対応する意思を示さない発言
「時間が解決するんじゃないかな」「あまり大事にしないほうが良いと思う」などの発言は、勇気を出して相談した行為を否定するメッセージとなって伝わってしまいます。相談者の意向を退け、担当者の個人的見解を押し付けるような発言
「ハラスメントとして声を上げることで、あなたが職場に居づらくなってしまうんじゃないかな」などの発言により、「だから黙っていたほうが良い」というメッセージと捉えられてしまうこともあります。ハラスメントを発生させない職場づくり
企業が未然防止のためにできることとして、ハラスメントが起きない職場づくりに取り組む必要があります
未然防止のポイント
従業員がいきいきと働くことができ、能力やその人らしさを発揮することができれば、自然と生産性も向上し、企業利益の上昇につながります。 そのためには、さまざまな事前の取組があげられます。そのために押さえておきたい ポイントは、下記のような内容です。
- 法律、制度、社内ルールなどを理解しておく
- 多様性のある人がチームや企業をつくっていることを理解し、業務状況やコミュニケーションへ目配りし課題がないか探す
- 自分の価値観を押し付けない
- 自分の行為がハラスメントに当たらないかをセルフチェックする
- お互いを理解し合い、尊重する雰囲気の醸成のためにチームビルディングや1on1を活用する
ハラスメントへの対処法は働く人の相互理解が必要
人と人とが働く場においては、ちょっとしたすれ違いや摩擦から、関係が悪化したりハラスメントにつながることも発生します。 その時に企業として適切な対応ができるように、日頃から対策を講じることで、従業員同士の相互理解につなげることができます。 ご自身の所属している組織のことを振り返り、必要なことは改善していくようにしましょう。
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