• 健康経営
  • 2020.10.14 (最終更新日:2022.03.26)

協会けんぽのインセンティブ制度と保険料

目次

協会けんぽは各47都道府県にある支部によって色々違っている

協会けんぽは一言でいっても、決まり事や健康づくりに関する取り組みや方針などが違っています。支部ごとに独立した組織のようになっているのですが、各地域にある企業は自分の地域の協会けんぽの支部のことしか知らないので、地域ごとに格差があることを知りません。

そして、その格差を今後は支部ごとに順位を決めて変えていこうとしている動きがあります。それが、今回ご紹介するインセンティブ制度です。

では、それがどういうもので、なぜできたのかなどを含めてこの記事で紹介していきます。

協会けんぽにあるインセンティブ制度とは?また、そのねらい

実績を保険料に反映するイメージ図

インセンティブ制度とは

それでは協会けんぽの「インセンティブ制度」について説明をします。これは、平成30年度から導入したもので、各支部に加入している方や事業主がどれだけ健康についての行動をとったかを支部ごとに順位分けをすると言うものです。この順位によって、健康保険料率が変わります。
また平成30年度の取り組み実績は、令和2年の保険料率に反映するため、2年前の結果でその年度の保険料率が変わってくるということです。

上位の支部には報奨金が渡されて、保険料率が低くなるという仕組みですが、そのお金はどこから出るのかと言うと、加入者全員からの負担となります。

令和2年度から保険料率が上がります。最終的には0.01%上がるのですが、3年をかけて段階的に行おうということで、令和2年度は保険料率は0.004%アップ、令和3年度は保険料率は0.007%アップ、令和4年度からはずっと保険料率0.01%のアップとなります。

これだけみると保険料率が上がっているだけのように見えますが、支部で競い合い上位に入ることができれば、アップした保険料率以上の報奨金を得ることができ、インセンティブ制度を導入する前よりも保険料が安くなるという仕組みです。

インセンティブ制度のイメージ

インセンティブ制度の評価は

では、実際に何を評価の対象とするのかについても見ていきましょう。
全部で評価項目は5つあります。
(1)特定健診等の実施率
(2)特定保健指導の実施率
(3)特定保健指導対象者の減少率
(4)医療機関への受診勧奨を受けた要治療者の医療機関受診率
(5)後発医療品の使用割合

評価指標

協会けんぽがインセンティブ制度を取り入れたわけ

つまり、協会けんぽに加入している人数によって保険料率が変わるのではなく、どれだけ健康に気を付けているのかということと、ジェネリック医薬品の普及を目的として行っているということです。

また、令和2年度の今年からインセンティブ制度の結果が反映されています。平成30年度の実績を見て見ると、上位23支部は佐賀支部から静岡支部となっています。その結果、これだけの保険料に影響が出ました。

インセンティブ分の保険料率

特に、1位だった佐賀支部は月額平均が30万円で換算すると1人当たり月平均119円、1年間で換算すると1,428円の保険料を引き下げることができました。
従業員数が100人で年間142,800円、500人だと年間714,000円、1000人だと約150万円もおさえることになっています。

これは企業にとっても嬉しいことですよね。健康について取り組んでいる企業が増えれば、その地域の支部の順位も上がり、保険料も下がっていくというのが、このインセンティブ制度のいいところです。

また、表にある上位に入らなかった福岡支部から高知支部での保険料率は0%となっていますが、この制度が導入され今年度は昨年度に比べると0.004%アップしています。令和3年度は0.007%上がるわけですから、今からでも真面目に健康について取り組んでおきたいところです。

実は47都道府県の支部によって健康保険料率が違っている!

料率 ただそもそも、どうしてインセンティブ制度が始まったと思いますか?

インセンティブ制度が始まる前、実は支部によって同じ協会けんぽでも保険料が違っていました。これはあまり知られていないことでもあります。協会けんぽのHPには保険料率についても書かれていますが、わざわざ自分の企業がある地域以外の協会けんぽを見に行くことがなかったためです。

組合健保もそうなのですが、組合員が多くいるところでは黒字運営ができるため、組合員に対して様々な還元をすることができます。ですが、赤字運営をしているところでは、組合員が足りていないため赤字経営になり、一人当たりの保険料を値上げしないと運営そのものが破綻してしまうことになり、結果として組合員にも負担をかけてしまうという悪循環が起きています。

そういったことが、協会けんぽの各支部でも起きていました。
実際にどれだけの金額の差があったのかと言うと、保険料率が一番少ない支部と保険料率が一番多い支部の差は1.17%もあります。これだけ両立が違うと、同じ100人規模の企業であっても、年間保険料の差額は200万円になります。
もし1000人規模の企業であれば、年間2000万円も違うことになるのですが、こんな格差が起きていることにも企業は気づいていなかったというのも問題です。

そこで、そういった不公平を無くすために、インセンティブ制度が生まれたというわけです。

保険料は企業努力で大きなインパクトを与えることができる

保険料 ですが、このインセンティブ制度ができたことによって、支部内にいる企業の数や運営方法だけではなく、企業努力で保険料を減らすことができるようになりました。

二つ前の項目でも取り上げた、
(1)特定健診等の実施率
(2)特定保健指導の実施率
(3)特定保健指導対象者の減少率
(4)医療機関への受診勧奨を受けた要治療者の医療機関受診率
(5)後発医療品の使用割合
この5つのうち(1)~(4)は従業員一人一人が健康に関心を持っていれば、必ず高い数値にすることができます。そして、健康が大事だと従業員に思ってもらえるように経営するのは事業主の役割です。それこそが健康経営といえるでしょう。

(3)については、従業員の普段の働き方にも影響があります。従業員の健康を考えるなら、会社内で何を行えばいいのかを検討し実行していけば、特定保健指導対象者もおのずと減少していくでしょう。

(5)については、これからの医療を発展させていくためには必要なものです。ジェネリック医薬品はただ安いだけというイメージを持っている人もいますが、薬の可能性を高めるためのものでもありますので、企業でジェネリック医薬品を推奨してみてはいかがでしょうか。

まとめ

企業努力によって保険料が変わる時代はすでに始まっています。また、自分たちの企業だけが健康を意識しても、同じ地域にあるほかの企業が意識しなければ意味がないからやめるという考え方もナンセンスです。

そもそも健康経営という経営方法は、他の企業と手を取り合っていった方が成功しやすい面があります。協会けんぽはそういった健康経営の側面を、企業側に伝えるためにこういった取り組みをしているのでしょう。

まずは、自分の企業内での健康意識を高め、そして次に同じ地域の他の企業の健康意識を高める運動をしていけば、健康経営をしている企業が増え始め、経済が潤っていき、従業員たちも生き生きとし、明るい未来を想像できるのではないでしょうか?

初めは追い立てられるように始めたとしても、結果は後ろからついてくるでしょう。

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