• 健康経営
  • 2022.04.22

これからは企業にもがん対策が必須!がん対策推進企業アクションとは?

がん
目次

増加する働くがん患者のために企業ができる取り組みを知る

昨今、日本では生涯に2人に1人ががんになり、そのうち3人に1人はがんで死亡する時代だと言われています。

高齢者だけでなく、働き盛りの40〜50代で発症するケースも少なくありません。今回はがん対策が必要な理由と、企業ができる対策や取り組みについてご紹介します。

なぜがん対策が必要なのか

企業とがん対策は一見関係性がないように思われますが、なぜ必要なのでしょうか。ここでは、企業から社員に対するがん対策の必要性について説明します。

日本ではがん患者が増えている

厚生労働省の発表によると日本人の死因第1位はがんであり、日本はがんの発症率が高いことで有名です。主に高齢者が多数を占めていますが、最近では働くがん患者も増加しており、その原因は主に2つ考えられます。

1つ目は定年年齢の引き上げです。2013年に政府が制定した「高齢者雇用安全法」により、定年が60歳から65歳に引き上げられました。現在は経過措置期間のため実施の有無は企業によりますが、2025年からは65歳定年制が義務化されます

がん患者数は50代を過ぎたあたりから急激に上がり、特に男性は60代を過ぎてからは上昇が顕著です。そのため、定年を迎える前にがんを発症する人が現在も今後も増え続けることが予想されています。

2つ目は女性の社会進出です。20代~50代までは男性よりも女性の方ががんの発症率が高いことで知られています。女性の社会進出が進んでいる現在、ちょうど働き盛りの年代での発症率の高さが働くがん患者が増加する一因と言われています。

がん検診受診率の低さ

日本のがん検診受診率は全体の40%ほどにとどまっており、60%は未受診にのぼると予想されます。がんの治療に最も大切なことは早期発見です。早期発見により、転移などもない状態で治療を開始した場合、5年生存率はほとんどのがんで90%を超えています。

しかし定期的ながん検診をせずに発見が遅れた場合、ほかの場所に転移している可能性が高く、その時の5年生存率は20〜50%にまで減少します。初期のがんは風邪と似たような症状だったり、自覚症状がなかったりする場合がほとんどであるため自分で気づくのは厳しいでしょう。しかし、現在は医療の発展により早期発見であればほとんどの確率で完治・5年生存が可能です。

日本はがん検診受診率が40%とまだまだ低く、発見が遅れることで命を落とす人が非常に多いことが課題です。がん検診に行かない理由の中で1番は忙しくて時間が無いためという理由が挙げられます。

がん検診は部位毎に検査をするため、全身を検査するとなると一日では終わらず、何日かに分けて行う必要があります。部位ごとに半日〜1日休むことが求められるため、時間が無く検診自体を受けない選択をせざるを得ない状況です。

仕事の忙しさが理由でがんの発見が遅れてしまっては健康経営ができているとは言えません。企業側も社員の健康を守るためにがん対策をする必要が求められています。

仕事と治療を両立させる

がん発症が見つかった場合、すぐに治療を開始する必要があります。その際、がんの進行状況にもよりますが、多くのがん患者が仕事をしながら通院でがん治療をしています。

特に早期発見の場合は必ずしも入院・手術が必要というわけではありません。近年はがんによる入院日数も低下傾向にあります。通院による具体的な治療方法は放射線治療・抗がん剤治療の2種類が挙げられます。

放射線治療は基本的に毎日照射するため、通院も毎日しなければなりません。ただ、治療自体は1回30分程で終わります。通院しながら仕事も継続する場合は、出勤前に通院などがん患者の体に無理がないように調整する必要があります。

抗がん剤治療では3〜4週間を1クールとし、投薬期間と休薬期間を組み合わせる長期的な治療方法です。投薬期間は、がんの進行状態により入院が必要かを判断します。全身の状態が安定している場合は自宅での飲み薬による投薬が可能であり、場合によっては投薬期間のみの入院で済むなどの個人差があります。

自宅での治療が可能になった場合も、長期的な通院は必須だったり、人によっては抗がん剤によって副作用が出たりします。そのため、治療のスケジュールや体調に合わせやすいように企業側の配慮が求められています。がんの進行状況により治療方法や入院などもさまざまなため、個人に合わせた対策が課題です。

企業ができるがん対策とは

致死率の高いがんから社員を守ることは、健康経営を促進していく上でも重要です。今回は、企業ができるがんの予防と対策についてご紹介します。がんの早期発見・治療が可能な社会を目指すため、できることから取り入れましょう。

がん対策推進企業アクションに参加する

がん対策推進企業アクションとは、厚生労働省が開始した企業のがん対策をサポートする国家プロジェクトです。具体的な目的はがん検診受診率向上です。自治体だけではなく、当事者にとって身近な企業ががん検診受診の重要性を呼びかけることで受診率50%を超えることを目指しています。

また、企業と連携して促進することで検診に対するマイナスなイメージを払拭し、がんに対して前向きに取り組む社会を作る狙いもあります。ほかにも厚生労働省が示す企業ができるがん対策は下記の通りです。

  • 企業全体ががんについて理解する
  • がんになっても働ける環境を作る

早期発見の重要性や治療についてなど企業全体が、がんについて正しく理解することががんになっても働ける環境を作る土台になります。

がん患者が働きやすい環境とはどのような環境なのか、がんに関する正しい知識があれば対策しやすくなるでしょう

がん対策推進企業アクションでは、小冊子を無料配布や他企業が実施するがん対策事例の紹介など、がんに関する必要な知識を身につけるための手厚いサポートが受けられます。

がん対策の何から始めたらいいか分からない場合は、このようなサービスを利用するのもおすすめです。

がん患者が働きやすい環境作り

社員ががんになった場合も考え、どのような環境であれば仕事と治療の両立が可能なのかを見ていきましょう。

  • 無理をさせない
  • 治療のスケジュールに合わせる配慮
  • 副作用などの体調に合わせる配慮
  • 場合によっては休職できる体制

がんになったら発症前と同じように残業など多少無理をしての勤務は難しくなります。体力も落ち、治療による副作用で体調を崩すことも考えられるため、体を優先して休みやすい雰囲気作りも大切です。

また、がんの進行状況によっては長期入院が必要になる可能性があります。その場合がん患者が1番心配することは仕事や金銭に関することです。退職しなければならないのか、治療中の生活費や復職への不安など、体以外のことが原因でメンタルが不安定になります。

社員ががんになったことを想定して休職制度や支援制度を設けることで、仕事に関する不安が軽減します。メンタル面も非常に安定するため、企業ができる最大限のがん対策といえるでしょう。

がん対策推進企業アクションに参加するメリットとは

がん対策推進企業アクションに参加することで、企業側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、健康経営の推進ともリンクする、がん対策推進企業アクションのメリットについて見ていきます。

がんにより失う人材を早期発見で減らす

世界でもがんにより亡くなる割合が高い日本では、がんによる人材喪失は深刻な問題です。がん対策をせずに発見・対応が遅れれば人材喪失のリスクはさらに上昇するでしょう。

しかし、現代医学でのがんは、早期発見ができれば治る病気です。がん検診受診の時間もないくらい働かせて、発見が遅れたことにより大切な人材を失うことを防ぐメリットがあります。また「がんは治る」のはあくまで「早期発見」されたことが前提です。がん検診受診率の上昇に注力せず、がんになった場合の休職制度などのみを整えても、発見時には手遅れということもあり人材を失いかねません。

社員や企業を守るために整えたがん対策が無駄にならないためにも、早期発見をすることが最も重要です。また、これは健康経営の考え方の軸と同じです。健康経営の推進に注力している企業は、がん対策も合わせて行うとより効果的でしょう。

企業ブランドのイメージ向上

国家プロジェクトに賛同し、がん対策推進に積極的に取り組むことで、自社の利益だけでなく社会貢献をしている企業であるという良いイメージをもたせることが可能です。社員の健康を大切にする健康経営思考の企業であるというイメージが着くため、同業他社と差をつけられます。

消費者や顧客からの印象はもちろん、株主や新卒採用時では学生にも良い印象を与えられます。また、求職者からも印象がよくなり、より良い人材や即戦力を集めることで企業の生産性が上がるメリットもあるでしょう。

さらに、がん対策推進企業アクションに参加するとこのプロジェクトのロゴやマークを広告に使えるようになります。これにより企業に新たな価値を付けることが可能になり、企業価値のアピールの幅が広がります。

このように、がん対策を始めとした健康経営は企業の業績を上げることにも深く関わるため、同業他社との差をつけて生き残るためにも積極的に取り組むべき課題でしょう。

まとめ

医師と癌

今回は、企業によるがん対策の必要性とメリットについて、企業ができるがん対策には何があるのかについて述べてきました。

早期発見であれば治る病気になってきているのにもかかわらず、未だにがんによる死者が多いのは発見が遅れているケースが非常に多いためです。仕事が忙しかったからという理由で大切な命を失っては健康経営で社員を守れているとは言えません。

そうならないために、企業が率先してがん検診受診を促進する必要があります。がん患者のための休職制度や支援制度を設けることが難しい企業でも、検診のために休みを取らせることからであれば始めやすいでしょう。

企業のイメージアップにも繋がる健康経営を目指して、今の日本の課題であるがん検診受診率を上げていくことが今後求められます。

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