• 健康経営
  • 2022.10.26 (最終更新日:2022.11.24)

人材開発とは?人材育成との違いや定義・4つの手法を解説

人材開発
目次
昨今、労働人口が減少している中、人材確保が厳しい状況になっていませんか。企業が存続するためには、人材の「質」がこれまで以上に求められてきます。
今回紹介する「人材開発」は、社員の質を高めるための重要な施策です。企業として持続するためには、おさえておくべき取り組みといえるでしょう。 人材開発といっても、目的が抽象的で具体的な取り組み方法が分からないという方も多いでしょう。

今回は、人材開発の意味や導入プロセスについてくわしく解説しています。人材開発を進めたいという方は、ぜひ最後まで読んでいただき、参考にしてはいかがでしょうか。

人材開発とは?

トレーニング

人材開発とは、従業員全体のレベルアップを高める経営戦略です。人材開発によって、会社全体のレベルの底上げにつながります。まずは、人材開発の必要性や人材育成との違いを確認していきましょう。

人材開発の必要性

人材開発の目的は、「経営戦略実現に向け、全従業員の能力を底上げすることにより生産性を高めること」です。具体的な目的は次の4つがあります。

  • 経営戦略の達成
  • 即戦力化の実現
  • 生産性向上
  • 離職率を下げ人材を確保

人材開発が注目される理由

人材開発は、自社の経営戦略を基準に取り組むことで、経営戦略達成につながります。 たとえば、社内のITスキルが不足している場合は、「ITスキル習得させるために研修を実施する」などの人材開発を行います。

また会社が人材開発を積極的に推進することにより、人材の定着につながります。
「自分が成長できる環境だ」「スキル向上に会社がサポートしてくれる」と従業員が感じることにより、会社に貢献したいという意欲に結びつくでしょう。

人材育成との違い

人材開発と人材育成は、似た言葉ですが、対象者と目的が違います。

【対象者】
人材開発➡全社員を対象(短期的)
人材育成➡年齢層や役職層などポジションで区切る(中長期的)

【目的】
人材開発➡「全社員の能力を高めることにより経営戦略の達成」
人材育成➡「特定の社員が必要なスキルを習得する取り組み」

人材開発が注目される理由

人材開発が注目される理由は、次の2つです。

  • 仕事への価値観が変化したため
  • 生産性が求められるようになったため
近年働く環境は急激に変化しました。終身雇用制度の崩壊によって、長期勤続による昇給よりも成果主義が広がっています。そのため、短期間でパフォーマンスを最大化しなければならない働き方へのシフトが急務です。
企業は、短期間で人材開発を行い、従業員の能力を引き上げる必要があります。

人材開発の導入プロセス

導入プロセス 人材開発を導入するプロセスは次の3つです。人材開発を担う方の仕事内容や役割もあわせて確認していきましょう。

人材開発計画の作成

人材開発をする目的は、経営戦略を達成できる人材を開発することです。そのため経営戦略を土台とした人材開発の計画が重要なポイントとしてあげられます。人材開発を成功させるためにも計画作成は重要なプロセスです。その他にも次の点に留意して計画を作成していく必要があります。

  • どのような人材が必要か
  • どうやって人材開発を行うのか
  • 経営者の意向と従業員のニーズの把握

人材開発計画に沿った立案と実行

人材開発担当者は、人材開発計画に基づいて研修などを実行する役割を担います。具体的な施策を行う際には、従業員の声に耳を傾けることが大切です。経営者と従業員の目指す方向が、かけ離れてしまわないように調整する必要があります。

経営者と従業員が同じ目的に進むことによって、人材開発の効果も高まるでしょう。

人材開発計画を評価

人材開発の施策を行う際に「従業員が満足しているか」ということを意識することが重要です。人材開発計画の内容を評価し、改善しながら進めていく必要があります。その際のポイントは以下の通りです。

  • 従業員の潜在的可能性を向上させる教育になっているか
  • やりがいや充実感を感じているか
  • 成功体験を実感できているか
  • 成長を実感できているか
  • スキルと意欲が向上する内容であるか

人材開発の4つの手法

コーチング 人材開発の手法は、次の4つです。それぞれのメリット・デメリットを理解し、参考にしてみてはいかがでしょうか。

職場で学ぶOJT(オー・ジェイ・ティー)

OJTとは、業務に取り組みながら、社内で行う教育です。OJTには様々なメリットがあります。

  • 先輩や上司が教育するため教育コストが抑えられる
  • 実務にすぐ活用できるスキルが学べる
  • コミュニケーションが活発になる
デメリットとしては、指導者の業務負担が増える・指導者によって教育の質に差が出るなどがあげられます。指導者の業務量を調整することやマネジメント研修を行うなど対策を講じましょう。

職場から離れて学ぶOff-JT(オフ・ジェイティ)

Off-JTとは、業務から離れた研修やセミナーを受講することです。特定の従業員を集め、一斉に行うのが一般的です。実務に活かせる講義内容や現場の課題につながる内容を選定することが大切でしょう。専門講師に依頼するため、コストがかかる点はデメリットといえます。しかし、専門講師に学ぶことで次のようなメリットが得られます。

  • 体系的に知識やスキルを学べる
  • 高い専門性を学べる
  • 教育内容に差が出ない

自己啓発を補助

従業員の自主的な学びを補助する教育方法を自己啓発といいます。具体的な自己啓発例は次の3つです。

  • e-ラーニングの導入
  • 資格取得受講料の補助
  • 書籍購入費の支給
自己啓発のメリットは、次のような自由度があることがあげられます。

  • 時間に拘束されず好きな時間に学習できる
  • 従業員の主体性を育てることが可能
ただし、能力の差が生まれてしまうデメリットもあります。従業員の自主性に任せてしまう場合、自主的に学習を行わない従業員もいるかもしれません。
そのため、自己啓発を人事評価に結びつけるなどのメリットを提示するなど、工夫をしましょう。従業員が自己啓発の重要性を理解できるように、会社側はメッセージ発信を続けることが大切です。

考える力をつけるコーチング

コーチングとは、従業員が考えて行動できるようになることを目的としています。
上司は従業員自身が課題に気づくように、効果的な質問をしなければなりません。相手の話を聴き、質問し、観察、提案を行って相手に気づきを促すことが求められます。
コーチングのメリットは、仕事への意欲につながることがあげられます。

  • 自ら考え行動できるようになる
  • 成功体験を積むことでモチベーションアップにつながる
  • 従業員の潜在的な能力を引き上げる効果が期待できる
デメリットは、正解がないため、育成が困難な点があります。また一斉に教育できないため、効率が悪く、教育者の負担も増えてしまうことです。

人材開発成功事例

事例

人材開発を導入する際は、成功している企業の事例を参考にするのもいいでしょう。企業事例をそれぞれ解説します。

キヤノンITソリューションズ株式会社

キヤノンは、多様な研修プログラムを構築し、時代に適合した人材開発を先進的に取り組んでいる企業です。
「自ら成長する意欲があり、努力している人材に対して教育の機会を計画的に与える」を基盤に、人材開発を積極的に行っています。
具体的な取り組みは次の通りです。

  • スキル別教育
  • 階層別教育
  • 新入社員教育
  • 高度人材育成教育
参考:キヤノンITソリューションズ株式会社

ソフトバンク株式会社

ソフトバンクでは、従業員一人一人の自律的なキャリア開発を支援することを目的として人材開発に力を入れています。
従業員の多様性を尊重し、充実したキャリア開発が行える体制を整えているのが特徴です。
具体的には次のような取り組みを行っています。

  • ジョブポスティング(社内公募制度)
  • フリーエージェント(社内公募制度)
  • 資格取得支援制度
  • 自己申告制度
  • 能力開発目標
  • SB版キャリアドック
参考:ソフトバンク株式会社

人材開発における課題

課題

人材開発が効果的に推進できれば、生産性が向上し、企業はさまざまなメリットを享受できます。効果的に人材開発に取り組むために、人材開発における課題を把握しておきましょう。

指導者不足

1つ目の課題は、教育する指導者が不足していることです。厚生労働省の調査によると、課題として最も多かった回答は「指導する人材が不足している」の58.1%でした。
参考:厚生労働省「令和元年度能力開発基本調査」
指導者の負担を軽減するために、業務量の調整やアウトソーシングを活用するのも効果的です。

指導者のスキル不足

指導者としてのマインドが不足していると人材開発が効果的に行えません。適切な教育ができず、従業員から信頼もされず人材開発がスムーズに行えません。
人材開発を行う前提として、指導者が必要なスキルを習得していることが重要です。そのため指導者のスキルを高めるための研修などが必要でしょう。

人材開発支援助成金活用を検討

人材開発に関する課題を解消するためにも、人材開発支援助成金の活用を検討してはいかがでしょうか。
人材開発支援助成金とは、計画的に人材育成を行う事業主を支援する制度です。たとえば、指導者不足やスキル不足を外部講師に依頼することで解決できます。その際に助成金を活用することで費用負担を軽減することが可能です。

(参考)人材開発支援助成金活用例
  • 正社員と対象とした自社主催研修の会場費・宿泊費・飲食費
  • 外部講師依頼費用
  • 教材費
  • 外部教育機関への研修委託費およびセミナー・講座参加費
  • eラーニング・通信教育費
  • 公的資格取得援助費
  • 研修受講者・社内講師の手当(日当・交通費)
参考:厚生労働省「令和4年度 人材開発支援助成金」

人材開発と健康経営の関連性

助成金のほかにも政府は「全員参加型社会の実現に向けた職業能力開発の促進」を掲げています。誰もが活躍できる全員参加型社会の実現に向けて、労働者が少しでもキャリアアップできるように支援を充実することが示されています。

キヤノンやソフトバンクのように多様性を尊重した人材開発が、今後は求められるでしょう。企業が人材開発を進めていく上で、職場環境の整備や従業員の健康管理などの基本的な部分の土台が大切です。

労働者の自律的・主体的なキャリア形成が人材開発の成功のポイントです。そのために企業は、健康経営の推進など長期的に働きたいと思える職場環境の提供が必要となるでしょう。

人材開発をして会社全体のスキルを底上げしよう

人材開発は、経営目的達成のために、従業員の能力を教育をする経営戦略です。人材開発を成功させるには、経営課題に沿った人材開発を計画・実行・改善のプロセスを行うことが大切です。
人材開発は、生産性や業績向上だけでなく、人材の定着にもつながります。今回の記事をきっかけに、人材開発の取り組みを始めてはいかがでしょうか。

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