• 健康経営
  • 2022.04.20

人口オーナスとは?経済への影響・働き方問題・企業の対策を解説

人口オーナス期
目次

企業の勝敗を分ける「人口オーナス」

人口構造 人口オーナスとは、働く人よりも支えられる人が多くなる状態のことです。 人口構造の変動によって年金などの財政支出が増大し、経済にとって負担になっている社会構造を指します。 企業は、働き手が減少する中で生産性を高めるために、職場環境投資が鍵となるでしょう。 そこで今回は、労働力の不足や雇用形態の多様化に関連する「人口オーナス」について解説します。

人口オーナスとは?

人口の増加減少

人口オーナスとは、生産年齢人口の割合が持続的に低下する現象によって生じる、経済や社会への負担や重荷を意味する言葉です。

生産年齢人口とは、働いて経済を支える15歳から64歳の人々を指します。

人口オーナスは、経済にマイナスに作用する状態を示すキーワードです。

人口オーナス期と人口ボーナス期

人口ボーナスは人口オーナスと反対の状態を表し、人口に対する労働力が豊富な状態となることで、経済成長が促進されることを意味します。

人口ボーナス期と人口オーナス期の特徴は次の通りです。

人口ボーナス期

  • 生産年齢人口が多い
  • 高齢者が少ない
  • 社会保障の負担が少ない
  • 税収が多くインフラ投資しやすい
  • 経済発展しやすい

人口オーナス期

  • 生産年齢人口が少ない
  • 高齢者が多い
  • 社会全体の扶養負担が大きい
  • 社会保障の負担が多く、維持が困難になる
  • 経済が停滞しやすい

人口ボーナス期は、経済にとって有効な状態ですが、医療や年金制度が充実し、高齢化社会になるため一度終わると二度と来ないのが実情です。

人口ボーナス期が終わると人口オーナス期に入ることは、避けられない経済の流れといえるでしょう。

日本の人口ボーナス期

日本の人口ボーナス期は、1950年頃から始まり1990年半ばまでが該当し、この期間に高度成長をしており、大きく経済が発展しました。

現在人口ボーナス期の国は、インド・フィリピン・イラン・ナイジェリアなどです。

日本の人口オーナス期

日本は、世界の主要国で最も早く、1990年代から人口オーナス期に入った国です。

アメリカ・イギリス・ドイツ・中国といった世界の国々も人口オーナスに該当します。

海外では、人口オーナスのことを人口税と表す場合もあります。


人口オーナスが経済に与える影響

経済への影響

これまでの日本は、人口ボーナスの利点によって経済成長をしましたが、現在は人口オーナスに陥っています。

では、人口オーナスは経済にどのような影響を及ぼしているでしょうか?

  • 労働人口減少による生産性の低下
  • 経済成長の停滞
  • 社会全体の生産性低下
  • 現役世代の負担増加

労働人口減少による生産性の低下

生産人口の割合が低くなり、労働力供給が減少するため生産能力が低下します。

労働力不足を補うために長時間労働がさらに深刻化し、企業の生産性低下につながります。

長時間労働は、職場環境悪化につながり、ワーク・ライフ・バランスも実現できません。そのため、将来の労働力に影響を与えると考えられるでしょう。

 経済成長の停滞

働く人が減少することは、中長期的には経済成長・GDP(国内総生産)の停滞につながるでしょう。

また高齢者は、現役世代よりも医療費や介護の必要性も高まり、社会保障が増えるため経済成長を妨げる原因になります。

社会保障の負担が増えることで、労働者1人当たりの給与が増えていかず、消費が低迷し、経済全体に悪影響を及ぼす可能性が高まるでしょう。

社会全体の生産性低下

高齢者の割合が増加することにより、さまざまな場面で丁寧な対応が必要になるため、生産性に影響が出る可能性があります。

日本の生産年齢人口は、1992年をピークに減少し続けており、2065年には全体の51%まで落ち込むと予想されています。

人口ボーナス期であった1950年には、現役世代12.1人当たり1人の高齢者を支えていた状況でした。

一方現在(2020年時点)では、現役世代2.1人に対し1人の高齢者を支えています。

2065年には、現役世代1.3人で1人の65歳以上を支える社会が到来するでしょう。

現役世代の負担増加

日本の年金制度は賦課方式になっているため、人口オーナスが進むほど現役世代の負担が増加するでしょう。

賦課方式は公的年金の実質的な価値を維持するために、現役世代が納めた保険料を現在の年金受給者への支払いに充てています。

実質的な価値は、その時の社会物価・所得水準に応じた経済的価値です。


人口オーナス期の大きな課題

人口オーナス期の大きな課題

人口オーナス期は、労働力不足と働き方が重要な課題に挙げられます。

人口ボーナス期と人口オーナス期では、経済発展しやすい方則が正反対になっています。

人口ボーナス期の働き方

  • 主として男性が働く(肉体労働の業務が多い)
  • 長時間働く(大量生産をすることで利益を得る)
  • 時間直結型(時間が成果に直結)
  • なるべく同じ条件の人を揃える(一律管理ができる忠誠心の高い組織が強い)

人口オーナス期の働き方

  • 男女とも働く(頭脳労働比率が高い・労働力不足)
  • 短時間で働く(育児や介護で時間制約がある人が多い)
  • 違う条件の人を揃える(新しい価値の創造が必要)

日本が高度成長した背景は、人口ボーナス期に発展しやすい働き方を徹底して行ったことです。

そのおかげで、現在の社会保障やインフラ整備が整っています。

しかし人口オーナス期では、待機児童問題や長時間労働問題に着手しなかったために、現在の労働力不足に陥り、優秀な人材の奪い合いとなっています。

職場環境投資が企業の勝敗を決める

人口オーナス期に入った社会が経済を維持するには、企業の役割が重要となるでしょう。

今後深刻化する人材不足に対して、労働参入率を高める対策が必要であり、企業は次の3つの戦略がポイントです。

  • 男女共に働ける職場環境を作ること
  • 多様な人材の雇用
  • 短時間で働く組織

男女共に働ける職場環境を作ること

企業は人材不足を補うためにも、男女共に有効活用することが勝敗を分けます。

職場環境を整備すると同時に、多様な人材の雇用促進による労働力の底上げが必要となりますが、一方で、仕事と育児・介護の両立支援も人事労務の課題です。

育児・介護との両立が果たせない場合は、労働力がさらに不足するでしょう。

介護と仕事の両立問題は、介護ならではの難しい問題があり、介護休業などの制度や具体的な対応が重要です。

例えば、潜在的介護者の把握や一定年齢に達した従業員に、介護についての情報提供を行い、危機意識を持ってもらうように促す取り組みも必要でしょう。

多様な人材の雇用

現在の市場は、ニーズの多様化や短サイクルで変化するなど、従来型ビジネスが通用しなくなっています。

企業には、社会の課題を解決するような新しい価値の創造性が必要です。

新たなイノベーションを起こすためには、さまざまな価値観を持った人達が議論し合う必要があります。

新たなアイディアや想像力を発揮してもらうためにも、従業員のモチベーションを保つ取り組みが必要でしょう。

短時間で働く組織

オーナス期の働き方の特徴は、短時間で成果を上げ、労働生産性を高めることです。

その背景には、人件費が高いことも要因ですが、業務が非常に複雑化していることが挙げられます。

最新テクノロジーや社会のニーズの変化により働く人は、集中力を要する業務が増加しています。

「売り上げをアップすること」と同時に「持続可能な社会の実現やコンプライアンス・エコにも注意して」というように、さまざまなことに注意しなければなりません。

人口ボーナス期の肉体労働と比べると、短時間でミスなく、質の高い仕事をしていくことが求められ、非常に集中力を要する仕事に変化をしています。

人口オーナス期の働き方には、個々の生産性が業績を左右し、従業員のパフォーマンスを向上させるためにも、土台となる健康管理が必須です。

そのため、集中力を担保する睡眠が取れているかどうかが重要なポイントです。

企業は高い生産性を保つために、従業員が充分な休養を確保するための職場環境投資がポイントになるでしょう。

健康経営推進の重要性が増す人口オーナス

人口オーナス期の経済成長

近年、職場環境投資という点において、健康経営が注目されています。

特に生産性向上に効果を実感している企業が多くあり、取り組みが各地で広がっています。

数年前は、健康経営と言うと大企業が行うものという考えでしたが、現在は企業の生き残り戦略として取り組みを始める中小企業も増加している状況です。

実際に健康経営優良法人認定企業は、年々増加傾向にあり、その取り組み内容も高度化しています。

働き方の対策となる健康経営

生産性低下に関連する生活習慣と合わせて従業員の睡眠を支援することは、結果としてプレゼンティーズムの減少をさせ、労働生産性向上に成果をもたらします。

休養対策は、生活習慣病や疫病対策などの一部にアプローチすることよりも効果的です。

こうした健康経営の取り組みが、オーナス期の働き方に重要な経営戦略といえます。

まとめ

人材不足

今回は「人口オーナス」について解説しました。

人口オーナスとは、働く人の経済的負担が増え、経済が停滞状況に陥る社会のことです。

企業は人材が不足する中で、いかに労働生産性を上げられるかが課題でしょう。

そのために企業は、多様な人材の雇用が可能となる職場環境投資と生産性向上に貢献する休養対策が勝敗を分けるでしょう。

今回の内容を参考に、健康経営などの職場環境投資を視野に入れてはいかがでしょうか。


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