- 健康経営
- 2022.04.19
昼寝(シエスタ)制度とは?効果的なやり方と日本での導入事例
- 目次
昼寝制度で従業員の健康状態を改善しよう
日本企業は海外企業と比較して労働時間が長く、睡眠時間が十分に確保できていない傾向にあります。その結果、従業員のパフォーマンスが十分に発揮されないことにつながるでしょう。
従業員のパフォーマンスを改善し、健康経営を実現する方法の一つが昼寝制度の導入です。しかし、昼寝制度導入には、事前に適切な環境を整える必要があります。
今回は昼寝制度の概要、メリット、デメリット、企業の導入事例、導入のポイントについてご紹介します。昼寝制度を導入し、健康経営を実現する際の参考にしてください。
昼寝制度とは
昼寝制度とは就業時間中の仮眠を認める制度です。眠気を我慢して仕事をするより、短時間でも、睡眠をとることで、生産性が高まるといわれています。
海外ではGoogleなどの企業で導入されはじめ、日本でも徐々に広まりつつあります。
シエスタ制度とは
シエスタ制度は労働基準法での休憩時間以上に長い休憩時間を設けている制度です。このシエスタは昼寝できるほどの時間が確保されるため、シエスタ制度と昼寝制度は同義で扱われることもあります。
日本で注目されるようになった背景
日本で昼寝制度が注目されるようになったのは、昼寝によるリフレッシュ効果が注目を集めたためです。
厚生労働省によると、午後の早い時間に30分程度の短い昼寝をすることで、眠気による作業効率の低下に効果があると公表しています。
参考:厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針 2014」
このような背景から大手企業をはじめ、スタートアップ企業でも徐々に導入されるようになりました。
昼寝制度導入のメリット
シエスタ制度の導入は、従業員にとって以下のメリットがあります。
- 集中力の向上やストレスの軽減
- 従業員の健康状態の改善
- 企業の生産性の向上やブランドイメージアップにつながる
それぞれのメリットについて、次で詳しく解説します。
集中力の向上やストレスの軽減
昼寝を15分程度取るだけで、眠気対策ができ、集中力の向上やストレスの軽減に効果的です。短時間の昼寝により、集中力の向上が期待できます。眠い状態であれば集中するのは難しく、生産性が落ちてしまいがちです。
休憩時間が長く取れることで、ストレスの軽減効果も期待できるでしょう。
従業員の健康状態の改善
昼寝制度の導入で、従業員の健康状態を改善効果するが期待できます。特に長時間労働や肉体労働をしている場合、短時間の昼寝制度を導入することで、体力回復や睡眠不足の解消効果が期待できるでしょう。
企業の生産性の向上やブランドイメージアップにつながる
昼寝制度の導入により、従業員の健康状態が改善し、従業員のパフォーマンスがよくなります。その結果、生産性の向上にもつながることが期待できるでしょう。
従業員の健康状態がよくなることで、企業のブランドイメージが向上する点もメリットです。昼寝制度は導入している企業が少ないため、対外的にアピールできる材料になります。ブランドイメージがよくなることで、優秀な人材が確保しやすくなるでしょう。
昼寝制度導入のデメリット
昼寝制度はさまざまなメリットがあるものの、以下のデメリットもあります。
- 寝過ぎが逆効果になる
- 退社時間が遅くなる
昼寝制度を導入する際には、これらのデメリットを知り、事前に対策を整えることが大切です。
寝過ぎは逆効果になる
昼寝は15分から30分程度の睡眠であれば効果的ですが、寝過ぎると逆効果です。睡眠時間が長くなると、睡眠が深くなりすぎてしまいます。その結果かえって眠気や倦怠感が残り、集中力が欠けてしまう可能性があります。また、長すぎる昼寝によって、夜に眠れなくなるリスクも問題です。
昼寝制度を導入する際には、従業員に適切な時間とやり方で実践させましょう。
退社時間が遅くなる
昼寝制度を導入すると、退社時間が遅くなってしまう点に注意が必要です。長時間労働が常態化している場合、昼寝制度を導入することで、従業員に負担をかける可能性があります。
あまりに長時間労働になるような企業の場合は、昼寝制度を導入する前に労働環境を整えることが必要です。
効果的な昼寝のために重要なパワーナップとは
昼寝の効果を最大限高めるために、知っておきたいのがパワーナップです。パワーナップとは、昼12時から15時までの間の効率的な昼寝の方法です。パワーナップの実践には以下のポイントを押さえておきましょう。
- 15分から30分程度の睡眠
- 机で座った状態で眠る
- アイマスクなどで環境を整える
- 寝る前のカフェインで目覚めがよくなる
それぞれのポイントについて、次で解説します。
15分から30分程度の睡眠
パワーナップでは、15分から30分程度の睡眠にとどめることが大切です。これ以上長い睡眠になると、深い睡眠であるノンレム睡眠に入ってしまい、目覚めた後に倦怠感を感じるなど、業務に支障が出てしまいます。
机で座った状態で眠る
昼寝をするときはベッドではなく、机に突っ伏した状態か椅子にもたれかかった状態で寝るのが効果的です。
このようにすることで、深い眠りに入りすぎてしまうのを防いでくれます。ベッドのような場所で横になると、深く眠ってしまいやすいため、注意が必要です。
アイマスクなどで環境を整える
睡眠の質を高めるための環境づくりも重要です。あまりに静かだと、ちょっとした雑音も聞こえやすくなり、寝付きが悪くなります。
そのため、雨や波の音のようなホワイトノイズが効果的です。ホワイトノイズは、さまざまな周波数の音が同じ強さで流れており、ホワイトノイズが流れている空間では、雑音が聞こえにくくなります。
光を遮断するためのアイマスクも、睡眠の質を上げる方法として効果的です。まぶたの皮膚は薄くちょっとした光でも眼球から脳に伝わり、眠りを浅くしてしまいます。
寝る前のカフェインで目覚めがよくなる
寝る前のカフェイン摂取は、寝過ぎを防ぎ、目覚めた後のパフォーマンスをよくする効果があります。
カフェインは摂取してから20分から30分ほど時間がかかるため、昼寝前に摂取することで、最適なタイミングで脳を覚醒させられます。
摂取してすぐにカフェインの効果が出るわけではないため、カフェインによって昼寝の効果が阻害されることはありません。
日本での導入事例
日本ではスタートアップ企業での昼寝制度がされはじめていますが、大手企業でも徐々に導入されはじめています。どのような事例があるか、次でみていきましょう。
三菱地所
2018年から仮眠室を導入しました。その仮眠室導入によって、どのような効果があるか、検証実験も実施しています。実験の結果、客観的な計測方法でも、主観的なアンケートでも「高い集中力が発揮されている」ことがわかりました。
参考:三菱地所「常に進化するオフィス」を目指す新本社で新たな取り組み 仮眠室を使用し、従業員による仮眠の効果検証実験をスタート ~従業員の生産性向上及びオフィスビル内仮眠室の商品企画向上へ~
GMOインターネットグループ
2012年から福利厚生の拡充プロジェクトの一環として、おひるねスペース「GMO Siesta」を導入しました。このスペースは平日12時半から13時半の期間に利用可能です。
このスペースでは、昼寝用のベッドと耳栓・アイマスクが完備されているほか、プロによるマッサージの施術も受けられます。
昼寝制度を導入するときのポイント
昼寝制度は制度導入自体は簡単ですが、利用しやすいよう体制を整えることが大切です。ここでは、昼寝制度を導入するときのポイントについて解説します。
従業員の健康状態に配慮しやすい雰囲気をつくる
昼寝制度を成功させるには、「健康状態に配慮するのは悪いことではない」という雰囲気づくりが大切です。仕事中の昼寝をよしとしない考え方が根付いている傾向にあります。そのため、従業員の健康のために昼寝制度が重要であることや、昼寝していることを「サボり」とみなさないよう従業員の意識を改革する必要があるでしょう。
特に上司や経営層が意識的に利用できる環境をつくることが重要です。意識改革が不十分だと、昼寝制度は従業員にとって使いにくいものとされ、利用されなくなってしまいます。
昼寝制度を導入するときには、事前に導入する目的やメリットについて伝え、昼寝制度の開始前にはアナウンスするなど、積極的に昼寝がしやすい環境を整えることが大切です。
仮眠用のスペースをつくる
仮眠用のスペースをつくり、リクライニングソファやアイマスク、耳栓などの導入をすると、昼寝制度が運用しやすくなります。
スペースがない場合、会議室などの広いスペースを昼寝の時間だけ開放することで、仮眠用のスペースを確保できるでしょう。
デスクでの昼寝を許可する
仮眠スペースの確保が難しい場合、簡易的な方法として、デスクでの昼寝を許可する方法もあります。この方法であれば、設備投資のコストもかからず、昼寝制度を導入できます。
しかし、昼寝のための環境や知識が十分ではない場合、適切な睡眠が取れないこともあるでしょう。そのため、事前に目的や効果的な睡眠方法をアナウンスすると、制度導入の効果は高まります。
まとめ
昼寝制度は適切な睡眠を取ることで、従業員のパフォーマンスやモチベーションの向上につながり、健康状態の改善にもつながり、健康経営の実現方法としても効果的です。
ただし、ただ昼寝制度を導入するだけでは従業員に浸透せず、十分な効果を発揮できません。昼寝制度を導入する際には、事前に体制を整え、従業員が利用しやすい環境を整える必要があります。健康経営の導入を実現する際の参考にしてください。
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