• 健康経営
  • 2022.06.09

ストレスチェック集団分析の活用方法とは?職場環境改善に生かす5つの方法を解説

ストレスチェック手段分析
目次

ストレスチェックの集団分析は、職場環境の改善を効果的に進める

ストレスチェックの集団分析は、職場環境の改善を効果的に進める手段です。制度の目的は、従業員のメンタルヘルス不調の未然防止対策ですが「ストレスチェックの集団分析の活用方法がわからない」「職場環境改善に集団分析をどう生かしていくべきか」と課題を抱えている労務担当の方もいるでしょう。

ストレスチェックの集団分析の結果を職場環境改善へつなげるには、判定図の見方や活用方法への理解が必要です。今回は、ストレスチェック集団分析の活用方法を解説します。

ストレスチェックと集団分析をペアで実施すべき理由

ストレスチェック制度

ストレスチェックと集団分析をペアで実施すべき理由は、職場全体にアプローチし職場環境の改善を行うためです。

  • ストレスチェック結果【個人結果】➡ストレス状況を認識し、従業員自身がセルフケアを行う
  • 集団分析結果【環境改善のヒントを得る】➡職場のストレスの傾向を把握・ストレス因子分析

仮に、従業員が精神疾患を患い会社側を訴えた場合、企業側は責任を負わなければなりません。しかしストレスチェックだけでは、企業側は、従業員の健康と安全に関わる結果を把握することができません。 なぜなら、ストレスチェックの結果は、原則として会社を含む第三者は知ることはできないからです。(労働者本人が結果開示に同意した場合や医師による面会指導を従業員が申し出た場合は、会社はストレス結果を知ることが可能)

ストレスチェックだけでは、従業員自身がアクションを起こさない限り、会社側として対策しようがないのが実情でしょう。

ストレスチェックの集団分析のメリット

  • 職場環境の状態が数値化できること
  • 部署ごとの特徴を把握できること
  • 経年変化や平均値と比較が可能になる
  • 課題が明確化できる

  • ストレスチェックの集団分析は、自社の課題を抽出できる手段です。ストレスチェックの時間・費用を無駄にしないためにも、集団分析はセットで実施しましょう。

    ストレスチェック制度の本来目的とは?

    ストレスチェック制度を創設した背景として、精神障害の労働災害認定件数が増加したことがあります。ストレスチェックの集団分析と職場改善は、企業のリスクマネジメントという視点で重要です。

    ※ストレスチェック制度とは、医師・保健師による検査の実施(年1回)が義務つけられています。(労働者が50人未満の事業場は努力義務です)

    ストレスチェックの集団分析の必要性【企業が得られる3つの効果】

    メリット

    「職場改善はハードルが高い」と思っている管理職の方は多いです。確かに簡単ではありませんが、リスクが大きくなってから対処する方が、2倍・3倍の労力が必要になります。ストレスチェックの集団分析を活用することで、リスクを早期発見し、対策することが可能です。

    ①従業員の健康状態の改善

    ストレスチェック制度に関する追跡研究で以下の有用性が示されています。

    • 従業員の6割がストレスを減らすのに役に立ったと回答
    • 心理的ストレスの改善(ストレスチェックを実施していない労働者と比較)
    • メンタルヘルス不調の発生が減少したという企業の報告もある(集団分析活用)

    ②生産性の向上(費用便益が約2倍)

    ストレスチェックの集団分析を活用した職場環境の改善は、生産性向上にも効果的です。国内外の多くの研究によって報告されています。

    • 仕事のパフォーマンスが改善していた(従業員自身の自己評価による)
    • 費用便益が約2倍と示されている【実施費用7,600円・得られる利益1万5,200円(1人当たり)】

    ③離職防止に効果的

    従業員にとって働きやすい環境を整備することは、離職防止につながります。例えば、次のような対策も可能でしょう。

    • 新入社員のストレス度合いを把握し、早期に対応する
    • 管理職やベテラン社員のストレス要因に気づき、部署ごとで対策する

    ストレスチェックの集団分析を生かすポイント

    ストレスチェック制度の流れ

    ストレスチェックの集団分析は、あくまで手段であってゴールではありません。「職場環境を改善していこう」という意思とプロセスが大切です。

    ストレスチェックを行っただけでは、環境改善の兆しが見えず労働者の不満につながり、受検率低下を招きます。受検率が低くなると、職場分析結果の判断に注意が必要となります。

    そのような事態を防ぐべく、ストレスチェックの意義や取り組みの意味を従業員に理解してもらうことが大切です。ストレスチェックの集団分析を生かすポイントは次の5つあります

    ①経営層の方針表明

    「ストレスチェックの集団分析の結果を活用して、職場環境の改善を実施する」という方針表明を行いましょう。経営層が明確な方針を出すことによって、従業員の期待度が高まり、ストレスチェックへの受検率低下を防ぎます。企業理念や活動目標と照らし合わせて、分かりやすい言葉で企業側が示すのもいいでしょう。例えば、労働者にとって身近に感じる呼称に変えるのもいいかもしれません。
    参考例:いきいき健診・いきいき職場づくり・職場ドック

    ②活用方針を明確にする

    ストレスチェックの集団分析の活用方針を決めましょう。職場環境の改善を視野にいれて、集計をどの単位で行うかを明確にし、職場の状況を把握することが目的です。部署単位で分析をした場合、以下が参考になります。
  • 時期や人員など現場の状況に合わせた提案
  • 仕事のコントロール度
  • 量的負担が高く過重になっている部署はどこか
  • 良好な部署での業務の工夫
  • 過重な負担のある職場の対策
  • ③問題指摘型ではなく、本題解決型で検討

    集団分析は、結果の悪い部分に焦点がいきがちです。ストレスチェックの集団分析をポジティブに活用し、「どうすれば良くなるか」を試行錯誤しましょう。まず最初に職場の良い点に目を向けることが、成功の秘訣です。具体的にうまくいった事例やツールをヒントにして活用します。また、集団分析結果を活用して情報の共有も効果的です。

    さらにさまざまな角度から検討することも大切です。特定の立場からだけでなく、管理監督者や従業員など、職場で働く方の意見も取り入れることで職場全体の改善につながります。

    ④ストレスチェックの集団分析の結果だけではなく、取り組みのプロセスを重視

    取り組みのプロセスを重視しましょう。定期的にフォローアップを行い、取り組みに対する評価・改善をPDCAに生かします。PDCAサイクルの検討事項は次の通りです。
  • うまくいった取り組みを振り返る
  • 困難だった取り組みや課題を整理
  • 良好事例をまとめ、全体に情報共有する
  • 改善のための話し合いや改善案の提案
  • 次年度に向けた改善案を考える
  • ⑤外部機関の相談役を活用

    外部支援者のフォローをうまく活用しましょう。外部機関(安全衛生委員会や産業保健スタッフ)が相談役となり、改善活動の進め方や改善策をフォローしてくれます。事業所の現場任せの取り組みにならず、効果的に集団分析の結果を活用できるでしょう。中小企業など、事業場に産業保健スタッフが在籍していない場合もあります。

    こうした中小企業にも活用できる外部機関があります。社員数50人未満の小規模事業所には産業保健センターを活用するとよいでしょう。専門医や保健師によるメンタルケア相談や指導が受けられます。ぜひ積極的に活用してください。

    画像出典元:厚生労働省

    ストレスチェックの集団分析【判定図の見方】

    ストレス判断図

    ストレスチェックの集団分析結果を部署単位で分析するには、さまざまな方法があります。職業性ストレス簡易調査票を使用した際は、上記のような仕事のストレス判定図を活用するとよいでしょう。

    例えば、総合健康リスクが120であれば健康リスクが 1.2 倍ということがわかります。「職場ごとの課題がなにか」が、心理的ストレス反応・疾病休業・医師受診率などから読み取れます。 

  • 仕事の量的負担✕コントロール判断図(得点の平均値を算出し、標準集団と比較)
  • 上司支援✕同僚支援(職場支援)判断図(得点の平均値を算出し、標準集団と比較)
  • 総合健康リスクを算出(「仕事の量的負担✕コントロール判断図」✕「職場の支援判断図」/100)

  •   判定図を活用することで、次の課題の抽出に役立つでしょう。
  • 各集団における心理社会的な仕事のストレス要因の程度
  • 健康リスクを評価(従業員の健康に与える影響の大きさ)
  • 仕事の量的負担やコントロール度合いを全国平均と比較
  • 上司・同僚の支援の程度
  • 予想される疫病休業のリスクの大きさ

  • 画像出典元:厚生労働省

    ストレスチェックの集団分析の取り組みの事例

    事例

    企業の中には、ストレスチェックの集団分析の進め方や課題・ハードルを抱えている企業も多くいます。効果的な実施の具体例が詳しく掲載されていますので、ぜひ参考にしてください。
    厚生労働省:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて


    ストレスチェックの集団分析で注意すべき点

    注意すべき点 ストレスチェック実施に関して「個人や部署が特定されてしまうのでは」「悪者探しでは」と不安を感じる従業員もいます。特に、現場監督や管理職の方は、管理職批判でないかとネガティブなイメージを抱えることもあります。経営層は、個人情報保護をはじめ、安心して回答できる環境整備やメッセージの発信が重要です。
    ストレスチェックの集団分析を職場改善に効果的に生かすには、従業員が前向きに取り組める工夫が大切でしょう。

    健康経営におけるストレスチェックの重要性

    従業員の満足度

    健康経営を推進する企業でも、ストレスチェックは重要視しています。健康経営は、従業員の心身の健康を企業が積極的に関与し、職場改善を促していく経営手法です。ストレスチェックは、メンタルヘルス不調を早期発見し、環境改善のヒントを得るための大切な役割を果たしています。

    そのため、健康経営優良法人をめざす企業では、努力義務となっている50人未満の事業場においても、ストレスチェックの実施が求められています。健康経営では、取り組みにかかる支出をコストではなく、経営的な投資として前向きに考えています。ストレスチェックなどの施策が、従業員の活力向上や生産性向上をもたらし、業績向上・企業イメージ向上につながるでしょう。

    まとめ

    痛む心に差し伸べる手

    今回は「ストレスチェックの集団分析」について解説しました。ストレスチェック集団分析の目的は、職場環境の改善のヒントを抽出する手段です。従業員が心身ともに健康で活力のある職場は、生産性にもよい影響を与えます。ストレスチェック制度の集団分析をポジティブに活用してはいかがでしょうか?

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